豪AIデータセンターのファーマス、IPO撤回 AI高評価懸念が拡大
概要
- 豪州の ファーマス は IPO 計画を撤回し、約 440億豪ドルの企業価値 に見合う投資家需要を確保できなかった。
- AIインフラ企業 の 収益性 と 負債 負担への懸念が強まり、コアウィーブの株価は15%急落、社債利回りは15%まで上昇 する動きが出ている。
- 市場では AI企業の企業価値、債務調達規模5000億ドル、データセンターとAIインフラ事業の採算性 を巡る警戒が強まっている。
期間別予測トレンドレポート



人工知能(AI)インフラ企業を巡る高評価論争が広がるなか、オーストラリアのデータセンター会社ファーマス(Firmus)が新規株式公開(IPO)計画を取り下げた。AI関連企業の成長期待が、実際の売上高や収益性に比べて過度に先行しているとの警戒感も強まっている。
10月19日、業界によると、ファーマスは10月のオーストラリア証券取引所(ASX)上場の推進を中止した。企業価値は約440億豪ドルを目標としていたが、投資家需要が届かなかったもようだ。
ファーマスはオーストラリアとアジアでAIデータセンター事業を手がけており、米エヌビディア(NVIDIA)の出資を受けた企業として知られる。ただ、実際に稼働しているデータセンターは2カ所にとどまる。2025〜2026会計年度の売上高も5080万ドル(約80億円)水準にとどまり、企業価値は過大だと受け止められていた。
AIインフラ企業全体を巡っては、収益性への懸念も強まっている。米AIクラウド企業コアウィーブ(CoreWeave)は先週、1日で株価が15%急落した。6月末時点の総負債は356億ドル(約5兆6200億円)に達した。6月発行債の市場利回りも当時の約9.675%から足元では15%前後まで上昇した。
市場では、AI産業に投じられる巨額資金が今後、実際のキャッシュフローや利益に結びつくかが焦点になっている。資金調達コストの上昇を受け、データセンターやAIインフラ事業の採算性を疑問視する向きも増えている。
アンソロピック(Anthropic)やオープンAI(OpenAI)など大手AI企業の企業価値も論争の的だ。アンソロピックは米株式市場への上場を進めるなか、企業価値を約2兆ドル(約316兆円)とする目標が取り沙汰されている。一方、前年の営業赤字は80億ドル(約1兆2600億円)を超えた。オープンAIも来年のIPOを進めるなか、企業価値は約1兆4000億ドル(約221兆円)とみられている。
2008年の金融危機時に米住宅市場の下落に賭け、映画『ビッグ・ショート』のモデルとして知られる投資家スティーブ・アイズマン(Steve Eisman)も、AI投資拡大に伴うリスクに警鐘を鳴らした。アイズマン氏は、AI産業の投資と収益構造がオープンAIやアンソロピックなど一部の大手企業に過度に集中していると指摘した。こうした企業に問題が起きれば、関連産業全体に衝撃が広がりかねないと警告した。
アイズマン氏は、今年のAI関連の債務調達規模が約5000億ドル(約7兆9000億円)に達すると述べた。一部企業が、財務諸表に直接負債として計上されないオフバランスの金融を活用している点もリスク要因に挙げた。
もっとも、ファーマスのIPO撤回をAI産業全体の危機とみるのは早いとの見方もある。イートロ(eToro)のアジア太平洋地域シニアアナリスト、ジョシュ・ギルバート(Josh Gilbert)氏は、オープンAIとアンソロピックはすでに実際の利用者と売上基盤を確保しており、ファーマスとは事情が異なると分析した。今回の事例については、投資家が単に「AI企業」という理由だけで高い企業価値を受け入れなくなり始めた兆候だとみている。
Minseung Kang
minriver@bloomingbit.ioBlockchain journalist | Writer of Trade Now & Altcoin Now, must-read content for investors.