メタとミューズAIがステーブルコイン押し上げる[パク・シンヨンの寄り付き前これだけ]
概要
- ブラックロックは、AI時代にステーブルコインが機械間決済の中核手段になり得ると明らかにした。
- リポートは、ステーブルコインが価格安定性と24時間の自動決済、迅速な決済、プログラム可能性を備えるため、取引中心のデジタル資産になり得ると伝えた。
- ブラックロックは、ステーブルコインとあわせてコンピュートをトークン化して売買する市場も成長し、関連需要が構造的に拡大する可能性があると見通しを示した。
期間別予測トレンドレポート



1. 米中、AI安全が主要議題に 開発競争の減速合意は難航
9月23日(現地時間)のウォール街では、ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が首脳会談でAI競争の減速に向けた実質的な合意に至るのは難しいとの見方が広がっている。
これに先立ち、スコット・ベッセント米財務長官は、国家安全保障問題に発展しかねないAI事故に対処するための意思疎通の枠組みも議題に含まれると明らかにした。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアロク・メタ・ワドワニAIセンター長は、両首脳ともAIモデルのサイバー能力強化を懸念していると説明した。特に、自ら計画を立ててウェブサイトに侵入するエージェント型AIが制御を外れるリスクを注視しているという。
もっとも、AI安全を巡る議論とは別に、技術覇権争いは一段と先鋭化している。米国は中国によるエヌビディアの最先端AI半導体へのアクセスを制限している。中国のAI企業が、より高性能な米国製モデルの出力結果を学習に使う「蒸留(distillation)」を進めているとの疑いも浮上している。中国はこれを否定している。
中国はこれまでも、AI対話を米国の先端半導体輸出規制を批判する場として活用してきた。メラニー・ハート大西洋評議会グローバル・チャイナ・ハブ上級部長は、中国が米国に対し、自国のAIモデル受け入れと半導体アクセス制限の緩和を求めていると説明した。トランプ大統領がこの要求を受け入れるかが焦点だが、対中技術規制を維持してきた米国の姿勢を踏まえると、実現は容易ではない見通しだ。
中国国内では、米国の制裁で開発速度がすでに制約を受けているとの認識も広がっている。エリック・シュミット元グーグル最高経営責任者(CEO)のオフィスで中国・AI政策を研究するセリーナ・シュー氏は「中国は米国の技術封鎖と半導体輸出規制で、すでに開発速度を強制的に抑えられているとみている」と語った。そのうえで「中国の政策関係者から『我々はすでに減速している』という声を聞いた」と明かした。
結局、今回の会談ではAI事故への対応や意思疎通の枠組みづくりといった限定的な協力の余地は残る。一方、半導体とAIモデルを巡る競争を減速させる合意までは見込みにくい。
2. ソフトバンク、ジャンク債発行へ 利回りは過去最高水準
ソフトバンクグループは、AI投資資金の確保に向けて110億ドル超の社債発行に乗り出す。信用力の低い企業が発行するハイイールド債としては、過去最大級の案件の一つとなる。
発行額は100億ドル(約1兆5700億円)のドル建て債と、10億ユーロのユーロ建て債で構成する。提示利回りは3年6カ月債が年8.75%〜8.87%、5年6カ月債が年9.37%〜9.5%、7年6カ月債が年9.7%〜9.87%となる。同年限のソフトバンクのドル建て債としては最も高い水準だ。
ソフトバンクは、対話型AI「ChatGPT」の開発元オープンAIに約650億ドル(約10兆2000億円)を投じる方針をすでに示している。今回の起債で調達する資金も、オープンAI投資やAI関連企業の買収に充てる予定だ。孫正義会長兼社長はAIインフラ投資を巡る懸念を退け、AI関連産業が2040年に世界全体の生産の20%を占め、規模は約46兆ドル(約7240兆円)に達し得るとの見方を示していた。
焦点は市場が求める調達コストの高さにある。ソフトバンクのS&Pによる信用格付けはBB+で、投機的等級では最上位に位置する。一般に、BB格企業のドル建て債の平均利回りは年6.55%前後だ。これに対し、ソフトバンクの提示利回りは8.75%〜9.87%と、Bマイナス格企業の平均利回りである年8.5%前後に近い。
格付け会社はソフトバンクをBB+と評価したが、実際に資金を貸し出す市場は、大規模なAI投資と借り入れ拡大を踏まえ、それを大きく上回るリスクプレミアムを求めている格好だ。技術が想定ほど早く収益化しない場合、AI投資ブームが社債市場全体の重荷になりかねないとの懸念も強まっている。
2026年に入ってからの世界のAI関連債の発行額は、すでに5750億ドル(約90兆5000億円)を超えた。借り入れでAIに投資する動きが広がるなか、ソフトバンクの高い調達金利は、AI投資熱に対する債券市場の警戒感を映す事例といえる。
3. IPO延期相次ぎ米株市場に不安 アンソロピックの上場時期に関心
米国では新規株式公開(IPO)を先送りする企業が相次ぎ、IPO市場への不安が強まっている。大手AI企業アンソロピックの上場を待つ投資家の関心も高い。
原子力発電サービス企業ホルテック・ニュークリアと保険会社バンブー・インシュアランスは、足元の市場環境を理由に最近IPOを延期した。バンブー・インシュアランスには、プライベートエクイティのCVCキャピタル・パートナーズが出資している。
米IPO市場では、レーバーデー後の9月が例年の繁忙期にあたる。ただ、2026年は9月に入って実際に上場した企業が3社にとどまるなど、予想より静かな展開になっている。
なかでもアンソロピックの動向に注目が集まる。当初は8月下旬にも上場申請書類を公開するとの観測があったが、いまだ提出していない。最近はコストを抑えた新たなAIモデルを公表した。AI技術の急速な進歩に伴うリスクを巡る議論への対応も進めている。市場では、アンソロピックがスペースXの記録的なIPO規模に匹敵する、あるいはそれを上回る資金調達を目指す可能性も取り沙汰されている。
株価指数は上昇基調を保っている。S&P500種株価指数は9月に入って1.1%上昇した。ナスダック総合株価指数は3%超上げ、過去最高値を更新した。それにもかかわらずIPO延期が相次ぐのは異例との受け止めがある。フロリダ大学IPOイニシアチブのジェイ・リッター所長は「ナスダックが過去最高値にあるのにIPOが延期されたのは驚きだ」と指摘した。「市場が大きく下落しているわけでもない」とも語った。
ブルームバーグによると、7月以降に米国でIPOを公開申請した企業は20社を超えるが、実際に上場したのは9社にとどまる。スマートリングメーカーのオウラは来週のIPOで最大22億ドル(約3460億円)を調達する計画だ。データセンターインフラ企業アクセラレーション・ホールディングスも同じ日に7億2000万ドル(約1130億円)の調達を目指している。
2026年の米IPO市場の調達額は、大型案件に支えられ、2021年以降で最大となる1614億ドル(約25兆4000億円)に達した。スペースXの862億ドル(約13兆6000億円)規模の上場と、SKハイニックスの265億ドル(約4兆1700億円)規模の米国預託証券(ADR)発行が全体を押し上げた。
ただ、一部の大型案件が成功したからといって、すべての企業が好条件で上場できるわけではない。2026年のIPO上位10件のうち5件は、現在公募価格を下回っている。今年のIPO銘柄の加重平均リターンも13%で、S&P500種株価指数の上昇率である約14%に届いていない。米連邦準備理事会(Fed)の利上げも重荷だ。金利が上がれば将来利益の現在価値は下がる。データセンター建設のように借り入れを必要とする企業の利払い負担も増す。地政学リスクや原油価格、金融政策など市場変数が増えるなか、手元資金に余裕のある企業は値動きの荒い局面で上場を急がなくなっている。
4. 「ディーゼル輸出禁止なら価格はさらに上がる」
米国のディーゼル価格が1ガロン6.53ドル(約1030円)と、過去最高を更新した。米自動車協会(AAA)の集計では、1年前に比べ75%高い水準だ。
トランプ米大統領は、ニューヨークで開かれた国連総会に合わせ、ディーゼル輸出の禁止を支持する可能性があるとの立場を示した。国内にディーゼルをより多く残せば、燃料価格全体を押し下げられるとの判断だ。大統領は、決定は「どちらの方向であれ、速やかに」下すと述べた。
これに対し専門家は、結果はむしろ逆になると警告する。ワシントンのシンクタンク、予算政策優先センターのグベンガ・アジロア上級エコノミストは「輸出禁止は国内供給を増やさない」と指摘した。むしろ供給を減らし、価格をさらに押し上げる可能性があるという。
同氏は、ディーゼル高の主因としてイラン戦争とホルムズ海峡を巡る不安を挙げた。戦争を終結させ、イランとオマーンの間にある主要原油輸送路のホルムズ海峡を再開放することが根本解決策だと説明した。
投資分析会社ベスポーク・インベストメント・グループも、輸出制限は世界のディーゼル供給を減らし、製油会社の収益性を損ねる可能性があるとみる。米メキシコ湾岸の製油所が、貯蔵能力の不足を背景に稼働を減らしたり停止したりする恐れもあると指摘した。
米国は1975年から2015年まで原油輸出を制限した経験がある。当時、米エネルギー情報局(EIA)など複数の研究は、輸出を認めても米国内のガソリン価格は上がらず、むしろ下がる可能性があると結論づけた。実際、2015年の規制解除後にガソリン価格が急騰することはなかった。
当時の輸出禁止の恩恵は、消費者よりも製油会社に帰したとの評価が多い。原油は国内にとどまり、国際価格より1バレル当たり10ドル超安く取引された。一方、ガソリンやディーゼル価格は国際需給に連動した。製油会社は安い原油を仕入れ、精製品を国際価格で販売して利ざやを広げたが、消費者価格は十分には下がらなかった。
ディーゼルも事情は同じだ。ディーゼルとガソリンは精製工程で同時に生産されるため、ディーゼルだけを切り分けて増産するのは難しい。米国は世界最大のディーゼル輸出国であり、輸出量が国際市場から消えれば世界価格が上がり、その影響が米国内にも跳ね返る可能性がある。
ニューイングランド地域の問題は、輸出そのものより輸送構造にあるとの指摘もある。この地域には製油所がほとんどなく、ディーゼル消費量のかなりの部分をカナダからの輸入に頼る。米メキシコ湾岸からの供給も可能だが、パイプラインの能力が十分でない。
最大の障害として挙がるのが、1920年制定のジョーンズ法だ。この法律は、米国の港湾間の貨物輸送を、米国内で建造され、米国人が保有し、米国籍を持つ船舶に限定している。米国製タンカーは外国製より価格が約4倍高い。人件費も高く、該当船舶が不足している。ジョーンズ法に準拠するタンカーの1日当たり用船料は約9万ドル(約1420万円)で、外国船の約9000ドル(約142万円)の10倍に上る。
その結果、同じ燃料を米メキシコ湾岸から北東部へ運ぶコストは1バレル当たり6ドル(約940円)に達する。一方、外国船でカナダに送る費用は約2ドル(約310円)にとどまる。ニューイングランドのディーゼル問題では、輸出禁止よりも輸送コストとインフラのボトルネック解消が重要だとの見方が強まっている。
スイスクオートのイペク・オズカルデスカヤ上級アナリストは「米国が輸出を制限すれば、世界のディーゼル価格は急騰し得る」と語った。さらに「米製油会社が輸出市場の一部を失えば生産を減らす可能性があり、結果として国内の他の燃料供給も逼迫しかねない」と付け加えた。
5. ブラックロック「AI時代の決済手段はステーブルコイン」
世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)は、AI時代にはステーブルコインが機械間決済の中核手段になり得るとの見方を示した。AIアシスタントが人の代わりに買い物をし、データを購入し、演算資源を調達する時代になれば、機械が直接扱える資金と決済網が必要になるという主張だ。
ブラックロックは9月公表のリポート「マシン・ネイティブ経済」で、AIとデジタル資産には、それぞれ「機械が使う知能」と「機械が使うお金」という共通点があると説明した。とりわけ、人の介在なしに複数段階の作業を計画し実行するエージェント型AIが広がるにつれ、両産業の結びつきが本格化するとみている。
AIは、文章を細かく分解して数値に変換したトークンをもとに内容を理解する。デジタル資産も、資金や資産の所有権をトークンの形に置き換えることで、機械が検証し移転できるようにする。例えば100ドル(約1万5700円)分のマネー・マーケット・ファンド持ち分をトークン化すれば、所有者や数量などの取引情報を機械が読み取り処理できる。
こうした仕組みのもとでは、AIアシスタントが残高を確認し、取引条件を点検し、決済まで自動処理できる。人の関与を最小限に抑えた大量・少額決済が可能になる。
ブラックロックは、既存のカード決済や口座振り込みは、AIエージェントによる大量決済に向かないとみている。現在の決済網は、口座開設や本人確認、件ごとの手数料、長い決済時間を前提に設計されているためだ。AIアシスタントが1日に数千件の少額取引をこなすには、24時間稼働し、手数料が低く、即時決済できるインフラが要ると指摘した。
AIアシスタントがデータ取得に使うAPIも、この変化の背景にある。人がウェブサイトで検索する場合は、広告や予約手数料を背景に無料サービスを使えることが多い。だがAIは、APIという機械専用の窓口を通じてデータを受け取る。この過程では、航空運賃、株価、天気、有料記事、他のAIサービスの呼び出しなどに件ごとの料金が発生し得る。
例えばAIアシスタントに東京旅行の最安値を探すよう指示すれば、航空会社やホテル数百社の料金をAPI経由で照会する可能性がある。1回ごとの費用は小さくても、照会と支払いが何百回も繰り返されれば、人がその都度決済するのは難しい。このとき、AIが自ら支払える手段としてステーブルコインが浮上し得るという。
ステーブルコインは、ドルや米国債などの安全資産を裏付けにし、1コインの価値をおおむね1ドル前後に保つよう設計されたデジタル資産だ。価格変動の大きいビットコインやイーサリアムと異なり、価格が安定しているため、商品価格の表示や反復決済に向くとされる。
ブラックロックは、ステーブルコインが取引中心のデジタル資産になる理由として、価格安定性、24時間の自動決済機能、迅速な決済、プログラム可能性を挙げた。リポートによると、2026年9月時点のステーブルコイン時価総額は3000億ドル(約47兆2000億円)を超えた。2025年の取引量は11兆ドル(約1730兆円)を上回り、2020年以降の年平均成長率は約80%に達した。
AIを動かす計算能力、すなわちコンピュートも新たな取引対象になり得る。ブラックロックは、2025年から2030年までのAI設備投資の累計額が5兆ドル(約787兆円)を超えると推計した。将来はコンピュート容量をトークン化して売買し、担保として差し入れたり、価格変動リスクをヘッジしたりする市場が生まれる可能性があるとみている。
コンピュートの実需家は、AIサービスを運営する企業になる可能性が高い。企業は将来の演算コスト上昇に備え、価格をあらかじめ固定できる。機関投資家はコンピュート価格の変動に投資したり、リスクをヘッジしたりできる。AIエージェントは、業務遂行に必要な演算資源をリアルタイムで比較し、最も安い供給先を選んで自動決済する役割を担う可能性がある。
ブラックロックは、エージェント決済とコンピュート取引の市場はまだ初期段階にあると位置づけた。ただ、AI導入が広がるほど、AIが直接使う決済手段と決済網、さらに計算能力を売買する市場への需要は構造的に膨らむというのがリポートの核心だ。
ニューヨーク=パク・シンヨン特派員 nyusos@hankyung.com
Korea Economic Daily
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