「利益より人類のためのAI」掲げるアンソロピック、最大2兆ドルIPOへ統治構造が試金石
概要
- アンソロピックが最大2兆ドルIPOを控え、LTBTが取締役会の過半の任命権を持つ独特の統治構造を維持する方針だと伝えた。
- 持ち株を持たないLTBTがAIモデル公開など主要な経営活動に影響力を及ぼしており、収益性を求める株主と衝突する可能性があると報じた。
- フリード教授はIPO前の統治構造変更の可能性に言及し、投資家はこの特殊な統治構造を踏まえて適正株価を算定すべきだと述べた。
期間別予測トレンドレポート


アンソロピック、最大2兆ドルIPOへ
設立趣旨守る独立機関
収益性求める株主と衝突も

最大2兆ドル(約308兆円)規模の新規株式公開(IPO)を控えるアンソロピック(Anthropic)が、独特の統治構造で注目を集めている。AIの安全性と人類の長期的利益を守る目的で設けた独立機関が取締役会の任命権を持ち、株主の権利と衝突しかねないためだ。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)が9月8日に伝えたところによると、アンソロピック長期利益信託(LTBT)は、商業的な圧力に左右されず人類のためにAIを開発するという創業の趣旨を守るために設けられた組織だ。
LTBTは最大5人で構成する。委員には、ベン・バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長、クリントン・ヘルス・アクセス・イニシアチブ(CHAI)のニール・バディ・シャ最高経営責任者(CEO)、新アメリカ安全保障センターのリチャード・フォンテーンCEOらが名を連ねる。
委員らは同社株を保有していないが、単なる助言機関を超える権限を持つ。まず取締役会の過半を任命、または解任できる。ネットフリックス共同創業者のリード・ヘイスティングス氏やノバルティスのヴァス・ナラシンハンCEOを含むアンソロピックの取締役7人のうち4人は、LTBTの指名を受けた。
主要な経営活動について事前報告を受ける権限も持つ。新たなAIモデルの公開も対象となる。FTによると、ミトスが登場した際にもLTBTは「限定公開」を勧告した。
アンソロピックは上場後もこの仕組みを維持する方針だ。FTは、この信託をAI業界の新たなガバナンス標準にすることがアンソロピックの構想だと報じた。
問題は、この構造が投資家との対立を招く可能性がある点だ。米ハーバード大学ロースクールのジェシー・フリード教授は、LTBTは会社の使命のために利益を犠牲にする判断も下し得ると指摘した。さらに、利潤追求を目的とする投資家から資金を受けようとする企業が、持ち分を持たない人物に会社の重要な意思決定を委ねる構造を維持しようとしていると批判した。株主との潜在的な緊張関係が企業のDNAに組み込まれているとも語った。
赤字経営のアンソロピックが上場すれば、収益創出への圧力は一段と強まる公算が大きい。未上場の段階では、創業理念や統治構造を理解するベンチャーキャピタル(VC)などから資金を調達してきた。だが上場後は、収益性に敏感な幅広い投資家と向き合う必要がある。社会的価値のために利益を犠牲にし得るLTBTと、収益を求める株主がいつでも衝突しうる構図だ。フリード教授は、IPO前に統治構造が変更される可能性があるとしたうえで、投資家もこの特殊な統治構造を踏まえて適正な株価を算定すべきだと述べた。
ハン・ミョンヒョン記者 wise@hankyung.com
Korea Economic Daily
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