「安価な中国製品ではもう持たない」 米財務長官、G20で対中共同関税提起へ
概要
- 米財務省はG20に対し、中国製品への高関税や輸入禁止などを通じて対中貿易戦争に加わるよう促す方針を示した。
- 中国の年間貿易黒字1兆2000億ドルと過小評価された人民元への対応として、人民元の切り上げ圧力や「第2プラザ合意」を巡る議論が広がっていると伝えた。
- 米国の共同関税要求を巡っては、EU・中南米など主要貿易相手の参加が不透明で、今後のEU・中国通商協議が分水嶺になると伝えた。
期間別予測トレンドレポート


「安価な中国製品ではもう持たない」
ベセント氏が打ち出す対中共同関税
G20財務相・中央銀行総裁会議で各国に貿易障壁強化を促す考え
米財務長官「中国の貿易黒字は1兆2000億ドル
輸出を止められるかは各国の対応次第」
対中圧力を多国間の枠組みに転換
関税をてこに人民元切り上げを迫る
「第2プラザ合意」論も浮上

貿易戦争の拡大に動くベセント氏
スコット・ベセント米財務長官は、G20財務相・中央銀行総裁会議を翌日に控えた8月30日、ロイター通信とのインタビューで、世界的な不均衡を減らす方策として、中国との貿易条件の見直しをG20各国に促す考えを示した。米国以外のG20諸国にも、中国製品への高関税や一部品目の輸入禁止を通じて、対中貿易戦争に積極的に加わるよう求める内容だ。
ベセント氏は、中国政府が輸出ではなく内需育成に力を注ぐよう圧力をかけるべきだとも訴えた。内需不振を抱える中国が、国内で売れない過剰生産分を安価に輸出しているため、輸入国では製造業が打撃を受け、貿易赤字と債務負担が膨らむというのが同氏の認識だ。同氏は「弱い内需を輸出で補おうとする中国を止められるかは、他国の対応にかかっている」と強調した。
米国は対中貿易戦争を2国間対立から多国間圧力へ切り替える構えだ。米国のけん制にもかかわらず、中国の貿易黒字は縮小していない。中国税関総署とゴールドマン・サックスによると、中国の貿易黒字は2021年の6764億ドル(約108兆円)から2025年には1兆1890億ドル(約190兆円)に増え、2026年は1兆2000億ドル(約192兆円)に達する見通しだ。米国市場で行き場を失った中国製品が、欧州や中南米など他地域に流れ込む風船効果が背景にある。
人民元の切り上げも圧力材料に
中国の貿易黒字は、相手国の赤字拡大につながる。ベセント氏は、2025年から1兆ドルを超える黒字を計上する中国を世界経済がこのまま受け入れ続けることはできないと警鐘を鳴らした。
各国の中国に対する危機感は強まっている。中国発の「輸出攻勢」を食い止めるため、中国を相手に「プラザ合意」を30年ぶりに結び直すべきだとの声もある。プラザ合意は1985年、米国、日本、西独、英国、フランスがドルの価値を下げ、円高を促すために結んだ国際通貨政策の協調体制だ。急増した米国の貿易赤字を減らすのが目的だった。
もっとも、足元で浮上している構想は1985年当時とはやや異なる。米外交問題評議会の分析では、人民元は適正水準に比べて最大35%過小評価されている。これを引き上げるべきだという主張だ。人民元安は中国製品の価格競争力を高め、輸出に有利に働く。ゴールドマン・サックスによると、中国の生産コストは海外の競合企業に比べて、電気自動車で32%、冷蔵庫で38%、靴で53%低い。
米経済界では、主要国が中国製品に共同関税を課し、中国が人民元を切り上げれば関税を引き下げる方式を提案する声が出ている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、過大評価されたドルの価値を引き下げるのではなく、過小評価された中国人民元の価値を引き上げることが目標になるべきだと主張した。
共同戦線を築けるか
2025年に中国との貿易で4120億ドル(約66兆円)の赤字を計上した欧州連合(EU)は、中国製品への警戒を強めている。ただ、中国への高い貿易依存を無視できない事情もある。ブラジルをはじめとする中南米諸国も、中国に対して全面的な貿易障壁を築くことには消極的な可能性が大きい。米国の要求をG20各国がそのまま受け入れるかは不透明だ。
10月に予定されるEUと中国の通商協議は、対中多国間圧力の実現可能性を見極める分水嶺となりそうだ。米国がG20各国の協力を引き出すには「あめ」も必要だという指摘もある。
ニューヨーク=ファン・ジョンス特派員/イ・ヘイン記者 hjs@hankyung.com
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