Loading IndicatorLoading Indicator

ウォッシュ氏のタカ派姿勢でも米30年債利回りの上昇が小幅にとどまった理由 背後にベッセント氏?

出典
Korea Economic Daily

概要

  • ウォッシュ議長は、2%の物価目標短期金利を通じたインフレ抑制を改めて打ち出し、追加の利上げの可能性を残した。
  • ベッセント長官は、長期国債バイバックの拡大発行政策の調整を通じて、30年国債の流動性と供給負担を和らげる政策方針を示した。
  • 今後は9月のバイバック執行、9月のFOMC、11月の国債発行計画の結果を通じ、長期国債利回りドル国債需要の行方を見極めることになる。

期間別予測トレンドレポート

Loading IndicatorLoading Indicator
ケビン・ウォッシュFed議長が8月28日(現地時間)、ジャクソンホールで講演している。写真:カンザスシティー連銀のユーチューブ映像
ケビン・ウォッシュFed議長が8月28日(現地時間)、ジャクソンホールで講演している。写真:カンザスシティー連銀のユーチューブ映像

ケビン・ウォッシュ米連邦準備理事会(Fed)議長とスコット・ベッセント財務長官が、異なる手段で米金利に対処する新たな政策の組み合わせを形づくる可能性がある。Fedは短期の政策金利で物価とインフレ期待を抑え、米財務省は国債のバイバック(買い戻し)と発行政策で長期債市場の流動性や供給負担を管理する構図だ。両氏がこうした役割分担で正式に合意したわけではないが、最近相次いだ政策対応と発言をつなぐと、機能面では補完関係が成り立つ。

米財務省が先に動いた。財務省は8月19日、残存10〜20年および20〜30年の固定利付国債を対象とする流動性支援バイバックの上限を、1回当たり最大20億ドル(約3200億円)から最低40億ドル(約6400億円)へと2倍超に引き上げると発表した。適用期間は9月10日から11月4日まで。狙いは特定の長期金利を抑え込むことではなく、長期国債市場により厚い流動性を供給する点にある。

ベッセント長官は8月20日のCNBCのインタビューで、政策の意図をさらに踏み込んで説明した。とりわけ30年債市場の流動性は「極めて悪い」とし、「利回りはファンダメンタルズを反映していない」と指摘した。バイバック拡大については、市場にシグナルを送る一種の「トレジャリー・ツイスト」だと表現したうえで、1回当たりの買い入れ額が40億ドルを上回る可能性にも言及した。

財務省はFedのバランスシート縮小に合わせ、国債発行政策も調整し得るとの立場だ。ベッセント長官は、Fedが保有国債を減らす場合には「財務省とFedがともに動く」と語った。Fedの保有資産の償還やバランスシート縮小に合わせ、財務省が発行政策を調整する考えを示した。

Fedが満期を迎えた保有国債の償還資金を新発国債に再投資しなければ、財務省はFedが引き受けなくなった借り換え分を民間投資家により多く配分しなければならない。そこで財務省が長期債の発行まで増やせば、民間が吸収すべき長期デュレーションは膨らむ。長期金利には上昇圧力がかかる。逆に、財務省が長期債発行を減らすか既発長期債をバイバックすれば、Fedの資産圧縮で増える国債の供給負担を和らげられる。

もっともベッセント長官は、こうした協調とFedの政策金利判断は明確に切り分けた。Fedが物価抑制のため政策金利を引き上げた場合、財務省のバイバック政策と矛盾しないかとの質問には、「今週公表したバイバック決定とは何の関係もない」と答えた。

続いてウォッシュ議長が8月28日(現地時間)、ジャクソンホールでの講演でFedの役割を鮮明にした。「2%は確固として固定された目標だ」と述べ、「短期金利は二重の責務を達成するための主要な手段だ」と強調した。基調インフレが目標に向けて明確かつ非常に速く進んでいるとの確信が得られない限り、「我々にはまだやるべきことが残っている」とも語った。

Fedが平時に長期国債買い入れやバランスシート拡大で金融市場を動かすのではなく、短期の政策金利で物価と総需要を調整するという原則を改めて示した格好だ。

ウォッシュ議長の景気認識も、追加引き締めの可能性を残す内容だった。Fedが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は、12カ月ベースで3.7%、直近6カ月の年率換算では4%をやや上回ると説明した。PCEを構成する199項目のうち、過去12カ月で3%超上昇した財・サービスの比率は54%だった。直近6カ月ベースでも49%に達した。夏場の物価指標は予想より良好だったとしつつも、「基調的な流れが意味のある改善を示しているとは言えない」とクギを刺した。

ChatGPT Image
ChatGPT Image

一方、失業率4.1%の労働市場については、おおむね完全雇用に合致すると評価した。設備投資と無形資産投資は直近4四半期で約9%増えた。S&P500種株価指数の構成企業の利益は過去1年間で20%超増加した。社債スプレッドや企業向け融資市場にも明確な引き締めシグナルは見られないとし、「幅広い金融環境を引き締め的だと表現するのは難しい」と述べた。

市場はまず、ウォッシュ議長の発言を政策金利上昇の可能性として受け止めた。米財務省の固定満期金利ベースでみると、8月28日終値の前日比上昇幅は2年債が14bp(bp=0.01%ポイント)と急伸した。これに対し10年債は6bp、30年債は3bpの上昇にとどまった。ロイター通信の取引時間中集計でも、2年債利回りは約11bp上昇の年4.34%、10年債は5bp高い4.72%、30年債は1.6bp上昇の5.206%だった。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が0.25%ポイント引き上げられる確率も、講演前の35%から講演後には57〜60%へ上昇した。

市場が注目したのは、短期国債利回りの上昇幅が長期金利を大きく上回った点だ。ウォッシュ議長の物価対応姿勢は、近い時期の利上げ観測には強く織り込まれた半面、長期のインフレリスクまで同じ幅で押し上げたわけではなかった。

ここでウォッシュ議長とベッセント長官の政策がつながる。ウォッシュ議長は短期金利を通じて物価上昇とインフレ期待を抑える。一方、ベッセント長官は取引が低調な長期国債を財務省が直接買い入れ、流動性不足に伴う負担の軽減を目指す。両者を機能面で組み合わせれば、「短期金利はFed、長期債の流動性と供給は財務省」という役割分担が成り立つ。

長期国債利回りは今後、短期金利の先行きだけでなく、長期債を保有し続けることへのリスク補償やインフレ懸念も織り込んで動く。ウォッシュ議長が高金利の長期化や追加利上げの可能性を示せば、短期金利は上がり得る。ただ、Fedが2%の物価目標を必ず守るとの信認を確保すれば、長期のインフレ懸念はむしろ低下し得る。そこに財務省のバイバックが加わって長期国債の売買を円滑にすれば、流動性不足ゆえに長期金利に上乗せされる負担も軽くできる。

ウォッシュ議長が過去に示した構想も、こうした読み筋を裏付ける。議長就任前の2025年7月、同氏は新たな「財務省・Fed協約」が必要だと主張した。Fed議長が長期的な中央銀行のバランスシート目標を説明し、財務長官がそれに合わせた国債発行計画を示せば、市場は両機関から出る国債供給をより正確に予測できるという考えだ。ただ当時も、政権側の要請に応じてFedが政策金利を決める方式ではないと線を引いた。

ChatGPT Image
ChatGPT Image

結局のところ、政策金利はFedが物価と雇用を見ながら独立して決める。一方で、Fedのバランスシートと財務省の国債発行が同時に市場へ与える供給ショックは、双方が調整する構図になる。この線引きが守られるなら、Fedの金融政策の独立性を損なわずに国債市場安定に向けた政策協調が可能になる。

市場関係者も、ウォッシュ議長の講演でこうした役割分担に目を向けた。ナティシスのクリストファー・ホッジ米国担当チーフエコノミストは、市場は利上げの可能性を過小評価してきたとしたうえで、ウォッシュ議長が物価問題を正面から認めて2%目標を再確認し、インフレ対応への信認を高めたと評価した。堅調な成長と完全雇用、緩い金融環境を踏まえると、Fedは高金利の維持、あるいは物価が改善しなければ追加利上げに傾いたと分析した。とりわけ、バランスシートではなく短期金利を主たる政策手段と位置づけた点を重視した。

ブリンカー・キャピタルでマルチアセット戦略を担うブライアン・ストーリー上席副社長は、ウォッシュ議長が2%目標とFedの責任を再確認したことが債券市場に一定の安心感を与えたと話した。バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)の米金利戦略責任者、マーク・カバナ氏も、ウォッシュ議長がジャクソンホールでより正統派のインフレ対応演説を行ったことが債券市場の落ち着きにつながっていると評した。

SEIインベストメンツの最高投資責任者(CIO)、ネイサン・シェティ氏は「タカ派的なトーン以外には解釈しにくい」と指摘した。「市場はこれまでFedの行動可能性を過小評価してきた」とも語った。コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は、ウォッシュ議長が「Fedの2%目標を巡る曖昧さを減らし、短期金利の役割を強調した」と診断した。ウェルズ・ファーゴ投資研究所のストラテジスト、ゲーリー・シュロスバーグ氏は「点をつなぐと、少なくとも1回、場合によってはそれ以上の利上げを正当化する材料がそろった」と述べた。

ただ、この政策の組み合わせがすでに効果を上げたとみるのは早い。講演直後の取引時間中には30年債利回りが一時低下したが、その後は再び上昇に転じた。米政府の長期調達コストそのものが下がったわけではない。

米財務省による拡大バイバックはまだ始まっていない。当日の市場価格には8月19日の発表を受けた期待が一部織り込まれた可能性はあるが、1回40億ドル超のバイバックが実際に執行されたわけではない。バイバック拡大が長期債の取引コストや利回りにどのような影響を及ぼすかは、9月10日以降でなければ検証できない。

ウォッシュ議長の政策運営の方向性も、完全に明らかになったわけではない。F.L.パットナムのチーフ市場ストラテジスト、エレン・ヘイゼン氏は「Fedは反応関数を開示しておらず、市場はなお暗闇の中にある」と評した。オサイクのチーフ市場ストラテジスト、フィル・ブランカト氏も「インフレ率をどこへ持っていきたいかは以前より分かったが、どのような物価と雇用の組み合わせがFedの行動を引き起こすのかは、なおほとんど見えていない」と語った。ステート・ストリートのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アーロン氏は「Fedが利上げするとはまだ結論づけていない」と述べた。

アンダーソン・キャピタル創業者のピーター・アンダーソン氏は「投資家は経済に関するGPSを望んでいたが、Fedが与えたのは方位磁針だった」とたとえた。マネーコープでトレーディング・ストラクチャード商品部門を率いるユージン・エプスタイン氏は、ウォッシュ議長は過去にもタカ派メッセージを打ち出しながら実際の行動に移さなかったと指摘した。今回も利上げに結びつかなければ、市場の信認が弱まる恐れがあるとみている。

ChatGPT Image
ChatGPT Image

Fedと財務省の政策が補完ではなく衝突に向かう可能性もある。ウォッシュ議長は、国債価格や取引量、ドル相場、信用コスト、商品価格などから「できる限りフィルターのかかっていない市場シグナル」を受け取る必要があると強調した。市場がFedの発言を見て価格を形成し、Fedが再びその価格を政策判断に使う、いわゆる「鏡の部屋」を避けたいという考えだ。

だが、米財務省が長期国債を大規模に直接買い入れれば、ウォッシュ議長が政策判断に使おうとする市場価格そのものが政府介入の影響を受ける。ロイターのコラムニスト、ガブリエル・ルービン氏は、投資家はFedと財務省という「2人の審判」を相手にすることになったと指摘した。ウォッシュ議長は市場に自律的な価格形成を求める一方、ベッセント長官は長期債市場で自ら笛を吹いている、という説明だ。

米財務省の介入が過度に大きくなれば、別の副作用も生じ得る。シティグループ(Citi)のグローバル・マクロ・資産配分戦略責任者、ダーク・ウィラー氏は、米財務省が30年債利回りを一定水準以下に強く抑え込もうとすれば、投資家は政府が価格を統制しない他国債に資金を移し、ドル安につながる可能性があると警告した。財務省にはなお使える手段が残っているが、「その手段があと何発残っており、いつ尽きるのか」が問題だと述べた。

今後注目すべきイベント

結局、ウォッシュ議長とベッセント長官の政策の組み合わせが実際に機能するかどうかは、今後3つの政策イベントで見極めることになる。第1は、拡大バイバックが始まる9月9日だ。米財務省が長期国債を40億ドル(約6400億円)以上買い入れたという事実だけで効果を判断してはならない。投資家が売却を申し出た国債のうち、財務省が実際にどの程度買い取ったのか。取引の薄い古い国債の売買がどの程度容易になったのか。新発債と既発債の利回り格差が縮小したのか。こうした点をあわせて見る必要がある。

こうした指標で取引環境が改善しているのに30年債利回りがなお上昇を続けるなら、長期金利上昇の主因は流動性不足ではない。米国の財政赤字や高い実質金利、市場が吸収しなければならない国債増発が中核要因だと判断できる。

第2は9月15〜16日のFOMCだ。市場はウォッシュ議長の講演後、利上げ確率を57〜60%へ引き上げたが、同氏は利上げを約束したわけではない。講演の最後には「特定の決定ではなく規律にコミットする」と述べた。Fedが実際に利上げに踏み切るかどうか。あるいは据え置くとしても、どのような条件なら利上げするのかをどう説明するか。そこがウォッシュ議長のインフレ対応への信認を左右する。

第3は11月4日に示される財務省の四半期国債発行計画だ。財務省は同日以降のバイバック規模を改めて公表する予定だ。1回40億ドル超の長期債買い入れを延長するのか。短期債と長期債の発行比率をどう調整するのか。Fedのバランスシート変化と結びついた具体的な発行方針を示すのかが焦点になる。

政策の組み合わせが機能するなら、Fedが短期金利でインフレ期待を抑える間に、財務省のバイバックは長期債の取引コストを引き下げるはずだ。30年債利回りと長期のインフレ補償が安定し、長期債入札の需要が改善する流れが表れなければならない。

逆に、30年物の実質金利が上昇を続け、長期債入札が低調なまま、財務省がバイバック規模を繰り返し拡大せざるを得ないなら、市場はこれを成功した役割分担ではなく価格管理の失敗と受け止める公算が大きい。ドルまで下落するなら、財務省が国債利回りから取り除こうとしたリスクが為替市場へ移ったシグナルになり得る。

キム・ジュワン記者 kjwan@hankyung.com

#債券市場
#物価上昇
#金利
Korea Economic Daily

Korea Economic Daily

hankyung@bloomingbit.ioThe Korea Economic Daily Global is a digital media where latest news on Korean companies, industries, and financial markets.

このニュース、どう思いますか?








PiCKニュース






ハッシュタグニュース