米30年債利回り、買い戻し拡大でも再上昇 5.27%まで反発
概要
- 米30年国債利回りは、財務省による買い戻し拡大の発表後も年5.27%まで再び上昇した。
- 低金利局面で発行された約8兆5000億ドルの国債が、従来より2%ポイント高い金利で借り換えられ、年間1700億ドルの利払い負担が増える見通しだ。
- 海外中央銀行の需要が減るなか、ヘッジファンドやステーブルコイン発行体が米国債の主要な買い手として浮上し、米国債は安全資産より収益追求の資産へ性格を変えつつあると分析した。
期間別予測トレンドレポート


米財務省が米国債の買い戻し拡大を発表して急低下していた米長期国債利回りが、わずか1日で下げの大半を打ち消した。対症療法では、米国債利回りの上昇を招く構造要因を和らげるには力不足との懸念が強い。米国債の流通を巡る環境が構造的に変わり、安全資産としての性格も大きく薄れているとの見方が市場で広がっている。
米30年債利回り、1日で反発

8月20日、米セントルイス連銀の経済統計データベースFREDなどによると、米30年国債利回りは同日の取引時間中に0.07%ポイント上昇し、一時年5.27%を付けた。米財務省が前日に、買い戻し規模を1回当たり20億ドル(約3180億円)から40億ドル(約6350億円)へ拡大すると発表する前とほぼ同じ水準だ。
発表直後には米30年債利回りが年5.18%近辺まで低下する場面もあった。ただ、1日で下げの大半を取り戻し、市場の地合いは再び悪化した。スコット・ベッセント米財務長官は8月20日、「使える政策手段は多いので見守る」と述べ、足元の国債利回りは経済の基礎的条件を適切に反映していないと指摘した。追加介入に含みを持たせたうえで、今週中か来週初めに財政健全化へ一段と軸足を移す発表をする考えも示した。
市場では、米政府がどのような措置を講じても短期的な対応にとどまるとの警戒が強い。背景には、米財政の変化そのものが政府を圧迫している事情がある。低金利期に発行した国債の満期が大規模に到来しているためだ。米財務省によると、2026〜2028年に満期を迎える米固定利付国債は約8兆5000億ドル(約1350兆円)に達する。
この大半は、従来より2%ポイント高い金利で借り換えられる見通しだ。米政府が追加の借り入れを増やさなくても、年間の利払い負担は約1700億ドル(約27兆円)増える計算になる。世界金融危機後に続いた低金利局面が新型コロナウイルス禍後に反転し、その「金利ショック」が米国債にも及んでいる格好だ。
短期債シフトも副作用
こうしたなか、米政府は国債の平均償還年限の短縮を進めている。短期債は長期債より発行金利が低く、利払い負担を抑えやすいためだ。今回の買い戻しでも、米財務省は既存の長期債を中短期債に振り替える方針だ。
残存1年未満の短期債は、2025年に米政府が新規発行した国債の84%を占めた。家計がカードの支払いをしのぐために借り入れを重ねるような構図だ。
目先の利払いは下がる一方、将来の金利リスクは大きくなる。30年債なら利率は30年間固定されるが、3カ月物や1年物は満期のたびにその時点の市場金利で借り換えなければならない。名目上は固定利付債でも、実態は金利が繰り返し見直される変動金利負債に近づく。物価ショックや戦争、中央銀行の政策変更があれば、国債発行コストは即座に押し上げられうる。国債利回り全体の変動性が高まり、安全資産としての色合いも薄れる。
米国債を買い集めてきた大口投資家の顔ぶれの変化も、構造的な利回り上昇要因になっている。世界金融危機後は、海外の中央銀行や政府系投資家が米国債の中核的な買い手だったが、足元では需要が細っている。ニューヨーク連銀の保管口座にある海外公的機関の米国債残高は、2021年の約3兆ドル(約477兆円)から2025年末には約2兆7000億ドル(約429兆円)へ減った。6月の海外投資家による米国債の純買越額は68億ドル(約1080億円)で、5月の566億ドル(約9兆円)から88%減少した。
代わって、ヘッジファンドやテザーなどステーブルコイン発行体が米国債の主要な買い手として浮上している。もっとも、これらの主体は短期債需要の下支えにはなっても、10〜30年物の供給を吸収してきた海外中央銀行の代替にはなりにくい。
こうした変化を踏まえると、米国債という資産の性格そのものが変わりつつある。かつては安全資産とみなされ、投資家は他の金融商品より利回りが低くても進んで買った。だが最近は国債発行量が大きく膨らみ、投資家が追加の補償、すなわち追加利回りを求める傾向が鮮明になっているためだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)のリカルド・カバレロ教授は「2015年以降の米国債利回り上昇幅2.5%ポイントのうち、0.75%ポイント前後は投資家の追加補償要求によるものだ」と語った。そのうえで「米国債投資では、安全資産の確保より収益を追求する傾向が強まっている」と分析した。
キム・ジュワン記者 kjwan@hankyung.com
Korea Economic Daily
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