韓国金融監督院、AIで暗号資産の不公正取引をリアルタイム監視
概要
- 韓国の金融監督院は、AI基盤のデジタル資産市場監視体制を構築し、相場操縦や仮装・通謀売買などの不公正取引をリアルタイムで捉え、分析すると発表した。
- 新たな体制は、競走馬型や囲い込み型など超短期のポンプ・アンド・ダンプ(Pump & Dump)パターンと、異常な価格・出来高の動きを重点的に検知する。
- 金融監督院は、ベンフォードの法則や機械学習、オンチェーン追跡などを通じてAIの高度化を進め、デジタル資産市場の利用者保護と健全な市場秩序の確立を強化していく方針だ.
期間別予測トレンドレポート



韓国の金融監督院は、人工知能(AI)を使って暗号資産(デジタル資産)市場の相場操縦や仮装・通謀売買などの不公正取引をリアルタイムで捉え、分析する市場監視体制を構築した。
同院は8月20日、生成AIと機械学習アルゴリズムを組み合わせたAI基盤のデジタル資産市場監視体制を独自に設計・構築したと発表した。複数の取引所で数千銘柄が24時間取引される市場環境を踏まえ、異常取引の検知から調査の要否判断まで、監視業務の効率を高める狙いがある。
金融監督院は2026年初めから、デジタル資産市場監視へのAI活用を段階的に広げてきた。1月には、相場操縦が疑われる口座の注文と相場関与区間を自動で見つけるアルゴリズムを開発した。4月には、相場操縦に動員された複数の関連口座を自動で識別する機能を加えた。今回は、AIの適用範囲をリアルタイムの異常取引監視や深度分析、調査着手の可否判断など市場監視全般に広げた。
新たな体制は、取引所から入るリアルタイムデータをもとに、短期間に異常な値動きを示す銘柄を優先的に選別する。特に、特定時間帯に価格が急騰・急落する「競走馬」型や、入出金が停止・制限された銘柄の価格をつり上げる「囲い込み」型など、超短期のポンプ・アンド・ダンプ(Pump & Dump)パターンを見分けて検知する。
異常な動きを捉えると、生成AIは取引所の告知や関連ニュースもあわせて調べ、価格や出来高が急変した背景を分析する。明確な好材料がないまま価格が急騰した銘柄や、典型的な相場操縦パターンが確認された銘柄については、取引所の売買資料を確保し、実際に調査が必要かどうかを追加で検討する。
仮装・通謀売買を見極める工程にもAIを投入する。金融監督院は、人工的に出来高を膨らませる架空取引を捉えるため、「ベンフォードの法則」と機械学習を組み合わせて適用した。銘柄ごとの出来高の数字分布が正常なパターンからどの程度外れているかを確認したうえで、オートエンコーダーやアイソレーションフォレストなどのアルゴリズムを使い、通常の売買との差が大きい取引区間を疑い対象として絞り込む。
監視対象は取引所内部のデータにとどまらない。金融監督院は、リーディングルームを利用した違法な先行売買に加え、虚偽情報を含む動画や不公正取引をあおるオンライン投稿もAIで分析する。
デジタル資産関連の投稿や動画は、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を通じて収集する。動画の音声や字幕をテキストに変換した後、生成AIが違法性の有無を判断する。AIは、投資家の売買を誘引する内容か、他人の不公正取引を告発する内容か、単なる会話かを見分けてリスク度を評価する。さらに実際の銘柄の値動きと結び付け、不公正取引の疑いがあるかを調べる。
AIが異常取引を捉えた後の深度分析手続きも自動化した。金融監督院は、リアルタイム監視の結果に苦情や情報提供、報道内容などを組み合わせ、分析対象銘柄を選ぶ。価格や出来高の変化といった定量指標だけでなく、AIが分析した価格変動の背景など定性的な要素も反映する。
深度分析の対象に選ばれると、既存の売買分析システムに生成AIと別個のAIアルゴリズムを組み合わせ、疑わしい口座と不審取引の区間を洗い出す。口座ごとの注文関与率や相場関与率、売買差益などを分析して疑い口座を選別し、それらと関連する口座まで追跡して、疑い口座群と取引区間を特定する。
分析結果をもとに検討報告書を作る作業も生成AIが担う。AIが各種の嫌疑判断指標を所定の様式に沿って報告書にまとめ、調査担当者がそれを点検したうえで、追加分析や企画調査に着手するかどうかを決める。
金融監督院は今後、AI市場監視体制をさらに高度化し、資金フロー分析やオンチェーン追跡を支援する機能も加える方針だ。
同院は、今回のAI基盤の市場監視体制構築を通じて、高度化・複雑化するデジタル資産の不公正取引に対し、限られた人員でも迅速かつ効率的に対応できるようになると期待を示した。あわせて、利用者を保護し、健全なデジタル資産市場の秩序を確立するため、AI基盤の市場監視・調査体制を一段と強化していく考えを示した。
Suehyeon Lee
shlee@bloomingbit.ioI'm reporter Suehyeon Lee, your Web3 Moderator.