物価不安でも金利据え置き選んだウォッシュ議長、米30年債利回りは19年ぶり高水準
概要
- 米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を年3.50〜3.75%に据え置き、今年5会合連続で据え置き基調を維持した。
- FRBの消極的なインフレ対応への懸念から、30年物米国債利回りは年5.23%まで急騰し、2007年7月以来で19年ぶりの高水準を付けた。
- 9月の利上げの可能性は、ウォッシュ議長の記者会見前の76%から65.2%へ低下した。
期間別予測トレンドレポート



米連邦準備理事会(FRB)は7月29日、政策金利の据え置きを決めた。3人が反対票を投じたため、追加利上げを示唆する「タカ派的な据え置き」との受け止めもあったが、市場の反応は逆だった。FRBのインフレ抑制姿勢に対する不信感が広がり、米長期国債利回りは急騰した。米ニューヨーク株式市場の主要3指数も下落した。有力視されていた9月の利上げ観測も、確実とは言い切れないとの見方が強まっている。
FRBは7月28〜29日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で、政策金利を年3.50〜3.75%に据え置いた。これで5会合連続の据え置きとなった。
据え置きに反対したのは3人だった。ベス・ハマック米クリーブランド連銀総裁、ニール・カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、ローリー・ローガン米ダラス連銀総裁はいずれも0.25ポイントの利上げを求めた。
市場の空気が変わったのは、ケビン・ウォッシュFRB議長の記者会見後だった。ウォッシュ議長は「(インフレ抑制で)目標はただ一つで、それは2%だ」と述べたものの、具体策は示せなかったと受け止められた。「インフレを容認しないのなら、なぜ今利上げしなかったのか」との問いには、「FRBに魔法のようにインフレを急速に下げる能力があるわけではない」と答えた。

政策金利を据え置いても、市場金利の上昇そのものが引き締め効果を代替しているとの認識も失望を招いた。ウォッシュ議長は「前回会合以降の42日間で、米国債の利回り曲線全般で名目金利と実質金利が相当上昇した」と説明したうえで、「こうした点は我々をある程度安心させた」と付け加えた。
市場では「FRBはインフレとの戦いから後退した」「タカ派を装ったハト派のウォッシュ議長」との批判が出た。30年物米国債利回りは前日比0.14ポイント高い年5.23%まで上昇し、2007年7月以来で19年ぶりの高水準を付けた。FRBの消極姿勢でインフレが長引けば、より高い金利が長期間続き、将来さらに大きな代償を払うことになるとの不安が背景にある。
「新債券王」と呼ばれるダブルライン・キャピタル(DoubleLine Capital)のジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は7月29日、「インフレ率を2%まで下げたいなら、利上げすべきだった」と指摘した。さらに「債券利回りの急上昇は、市場がウォッシュ議長に送るメッセージだ」と語った。金利急騰を受け、ニューヨーク株式市場の主要3指数はそろって下げ幅を広げた。長期金利の上昇は米家計や企業の資金調達環境の悪化につながりかねず、今後の景気にも悪影響を及ぼすとの懸念がある。
9月の利上げ観測は、FOMC前に比べて後退している。ウォッシュ議長の記者会見前に76%だった9月利上げの確率は、65.2%に低下した。
ニューヨーク=ファン・ジョンス、ワシントン=イ・サンウン特派員 hjs@hankyung.com
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