ヘッジファンドが支える米国債 細る長期資金
概要
- 米国の 財政赤字 拡大と 30年物国債利回り の上昇で、長期国債の魅力が低下していると分析した。
- プライマリー・ディーラー・海外中央銀行・年金基金 など長期の 国債投資家の比率 が低下する一方、ヘッジファンド の短期・レバレッジ取引の比重が高まり、市場変動性 が拡大していると指摘した。
- ドル高、AI関連の米国株 志向、実質金利の上昇 などで米国の 長期国債の比率 が低下しており、今後 長期金利の急騰 と国債市場の不安定化につながる可能性が大きいと評価した。
期間別予測トレンドレポート



米政府の財政赤字が急拡大するなか、国債市場の基礎体力に陰りが見えてきた。これまで政府債務を安定的に引き受けてきた長期資金が細る一方、短期売買や借り入れを活用する資金の存在感が強まり、市場の変動性を高めている。背景には、ドルが価値保存よりも米資本市場で収益を狙うための通貨として使われる傾向を強めていることがある。
長期国債利回りに警戒感
米財務省と米議会予算局(CBO)によると、2026年の財政赤字を埋めるため、米政府は1兆8000億〜2兆ドルの国債発行を迫られる。受け皿となる米国債市場は表面上なお堅調だ。1日あたりの取引高は1兆2000億ドルに達し、国債入札でも1ドルに対して2.3〜2.5ドルの応札が集まっている。
ただ、水面下では警告灯がともる。大口投資家が主に買う長期債の魅力が落ちているためだ。30年物国債の利回りは足元で10年物を0.5ポイント上回る。2025年初めの0.2ポイント差から開きが広がった。
国債利回りは年限が長いほどリスクに敏感に反応する。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、30年物国債の利回り急上昇と価格下落について、投資家が米政府の財政赤字や物価上昇の可能性を意識し、債券購入に慎重になっていることを示すと分析した。
国債入札で最後の受け皿の役割を担ってきたプライマリー・ディーラー(大手銀行・証券会社)の比重が下がっていることもリスク要因だ。JPモルガンによると、プライマリー・ディーラーの国債購入比率は2010年に年限別で40〜50%だったが、2026年は10〜15%に低下した。プライマリー・ディーラーに加え、海外中央銀行や年金基金など長期投資家の比率も、2007年の75%から2026年は52%に下がった。
変動性高めるヘッジファンド
この穴を埋めているのが短期投資志向のヘッジファンドだ。米政府の信用力を前提に国債を保有する長期投資家とは異なり、現物国債と先物の価格差を狙う裁定取引を手がけるのが一般的だ。
必要な資金はレポ取引(RP、現先取引)で調達する。例えば自己資金10ドルに銀行からの借り入れ90ドルを積み増し、100ドル分の国債を買う。
平時には小さな価格差でも収益を積み上げられるが、危機時に銀行が融資を引き揚げれば問題は大きくなる。米連邦準備理事会(FRB)によると、現物とデリバティブを合算したヘッジファンドの米国債投資額は2025年9月時点で40億4000万ドルと、2023年12月の28億9000万ドルから39.8%増えた。市場が動揺した局面でポジション解消と国債の投げ売りが重なれば、債券価格の急落と金利上昇を招きかねない。
ドル買い資金、債券でなく株式へ
主要通貨に対する上昇基調を保ち、「収益通貨」としての性格を強めたドルも、債券市場の魅力を損なう一因とされる。かつてはドル高局面で投資家がドルを買い、その資金を米国債に振り向けたが、足元では人工知能(AI)関連の米国株を選好する動きが目立つ。米実質金利(名目金利から期待インフレ率を差し引いた金利)の上昇も長期国債には逆風だ。より低い金利で過去に発行された国債の魅力が薄れ、価格が下がりやすくなるためだ。
ブルームバーグは、ウォール街の投資家がドル高に賭ける一方、物価や金利変動に敏感な米長期国債の比率を引き下げていると指摘した。政府債務を安定して引き受ける資金が減るぶん、市場のリスクは高まる。
米財務省が長期金利の上昇を抑えるため、主に短期の財務省証券を発行していることも一時しのぎにすぎないとの見方がある。既存債務と新たな財政赤字を賄うには、今後10年物と30年物の発行を大幅に増やさざるを得ないためだ。市場がこれを十分に消化できなければ、長期金利は急騰する恐れがある。
財政危機のたびに救援投手の役割を果たしてきたFRBの負担も重くなっている。WSJは、財政赤字の拡大、もろい市場構造、短期債への依存が重なり、小さな衝撃でも米国債市場の大きな不安に発展しやすくなったと指摘した。
ニューヨーク=ファン・ジョンス特派員/キム・ドンヒョン記者 hjs@hankyung.com
Korea Economic Daily
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