「もはや安全資産ではない」 ドルに異変、専門家に衝撃
期間別予測トレンドレポート


基軸通貨から収益通貨へ
80年ぶりのドル変容
米国債・米国株に資金集中
年金基金や個人の投資手段に

世界経済と株式市場で米国の独走が長引くなか、米ドルの性格が変わりつつある。各国の中央銀行が準備資産として積み上げる「基軸通貨」としての色彩は薄れ、米国の資本市場に流入して収益を上げるための「収益通貨」へ変わりつつある。1944年のブレトンウッズ体制の成立でドルが基軸通貨の地位を確立してから、約80年で起きた変化だ。
7月8日に国際通貨基金(IMF)が公表した世界経済見通し(WEO)によると、米国経済は2026年に2.3%成長する見通しだ。ユーロ圏全体の成長率は0.9%、英国は1.0%、日本は0.6%にとどまり、米国が大きく上回る。米10年物国債利回りは年4.5%台と、韓国の年4.2%台より高い。米国株は年初来で23回最高値を更新した。米資産への投資の入り口としてドルを保有する投資家が増える理由だ。
これに伴い、ドルの買い手は各国の中央銀行から年金基金、ヘッジファンド、個人投資家へ移りつつある。外国人による米国債保有では、民間投資家の比率が58.1%と、中央銀行など公的部門の41.9%を上回った。
米コロンビア大のアダム・トゥーズ教授は最近、英フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿で「今日の米国通貨は流動性の約束であると同時に、資本蓄積の手段になった」と指摘し、これを「利潤追求型ドル(profit dollar)の時代」と名付けた。こうした変化は今後、資産市場の変動性を高める公算が大きい。米カリフォルニア大バークレー校のバリー・アイケングリーン教授は韓国経済新聞の取材に対し、資金流出入の振れ幅が過去より大きくなれば、米金利の変動性も一段と高まり得ると語った。

民間が米国債の58.1%保有、投資資産化したドルの変動性高まる
「収益通貨」に変わるドル、ヘッジ効果も低下
2025年4月、ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスで各国に対する相互関税を発表した「解放の日」は、株式市場に大きな衝撃を与えた。だが、経済学者たちは別の意味でも衝撃を受けた。米国株、ドル相場、米国債価格がそろって下落したためだ。通常、株式市場が急落すると投資家はリスク回避のため安全資産へ移る。代表的な逃避先とされる米国債まで下落したことから、経済学界ではその背景を巡る研究が活発化した。そこで浮かび上がったのが、ドルの性格そのものが根本から変わり始めたという点だ。
安全資産としての役割は低下
7月8日、米外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー上級研究員は記者との電話取材で、最近のドル買い需要は過去と比べて構造的に変わったと指摘した。この10年間に米国へ流入した資金の大半は、安全資産を求める投資家ではなく、市場平均を上回る収益(アルファ)を狙う投資家から来たという。セッツァー氏は、ドルがもはや安全資産ではないという意味ではないとしつつ、米国へ流入する資金の性格が変わり、ドルのリスク資産としての側面が強まった結果、株安とドル売りが同時に起きる局面のリスクが大きくなったと説明した。
欧州中央銀行(ECB)でエコノミストを務めたヤコブ・アドルフセン氏らも最近、「ここ数年で米ドルと安全資産の相関関係が低下した」とする趣旨の論考を公表した。米国の対外純投資ポジション(NIIP=米国人の海外投資から外国人の米国投資を差し引いたもの)が悪化し、ドルの安全資産通貨としての地位も揺らいでいると分析した。ドル建て資産が持つヘッジ効果も、過去に比べて弱まったと評価した。
ドル需要の主役は民間投資家に
各国中央銀行のドル保有比率の低下は、ドルの地位に起きた根本変化を映し出す。中国の公的部門によるドル買いが一服し、この10年間、世界の中央銀行の外貨準備高総額は横ばい圏にとどまっている。一方、米国の経常赤字は同じ時期に急速に膨らんだ。国際収支は経常収支と金融収支の合計で成り立つため、経常赤字の分だけ、誰かが米国債などを買い入れていることを意味する。
海外の中央銀行に代わってドル需要を担っているのが民間投資家だ。米議会調査局(CRS)の報告書によると、2025年末時点で外国人が保有する米国債は計9兆2000億ドルに上る。このうち5兆4000億ドルを民間投資家が保有し、全体の58.1%を占める。
とりわけ大きかったのが米国株への投資需要だ。米財務省によると、外国人が保有する米ドル建て資産に占める株式の比率は、2023年6月末の51.1%から2025年6月末には56.2%へ上昇した。同じ期間に長期債の比率は44.5%から39.2%へ低下し、短期債は4.4%から4.7%へ上がった。短期債は最終的に株式投資へ向かう可能性があることを踏まえると、人工知能(AI)と巨大テック企業が主導した米株投資ブームがドル需要をけん引している。
韓国の個人による海外株投資も、「収益通貨」としてドルに接近する代表例だ。韓国預託決済院によると、海外株式の保管額は2021年の678億ドルから、2026年5月末には1800億ドルへ急増した。トゥーズ教授が、韓国などが米国の赤字を下支えしていると表現した背景だ。
より大きな変動性にさらされる
こうした流れは、米国債を含むドル建て資産全般の変動性を高める要因になり得る。アイケングリーン教授は、外国人投資家が米国に投資する際、まず米財務省が発行する短期国債を買って資金を待機させ、適切な時期にAI関連株などを買うと説明した。米国が有望な投資先とみなされていること自体は前向きな現象だとしたうえで、ヘッジファンドなど民間の外国人投資家は、保守的な中央銀行の準備資産運用者よりはるかに気まぐれに動くと警鐘を鳴らした。小さな悪材料ひとつでも、賭けの方向を反転させる可能性があるという。
ワシントン=イ・サンウン特派員/キム・ジュワン記者 selee@hankyung.com
Korea Economic Daily
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