【独自】クラフトン、ハイパーエクセルに500億ウォン出資 AI半導体で布石
概要
- クラフトンは、韓国のAI半導体スタートアップ ハイパーエクセル のシリーズBラウンドに戦略投資家として約 500億ウォン を投じ、AIチップのバリューチェーン強化に乗り出す。
- クラフトンは GPUクラスター の構築と AIキャラクター、AIエージェント の実験を通じ、推論コストがゲーム会社の中核競争力になると判断した。LPU を軸にAI推論コストの削減を探る。
- クラフトンは フィジカルAI、ロボット、防衛産業 分野への拡張を進めており、AIハードウエア基盤まで統制する総合テック企業へ進化しているとの評価が出ている。
期間別予測トレンドレポート



フィジカルAIの強化を進めるクラフトンが、韓国のAI半導体スタートアップに大口出資する。ゲーム会社が半導体企業に直接投資するのは異例だ。AIモデル「ラオン」から推論半導体まで自前で押さえる動きを広げており、ゲーム会社からAI企業への転身を急いでいる。
ハイパーエクセルに500億ウォン出資
6月22日、投資銀行(IB)業界によると、クラフトンは韓国のAI半導体スタートアップ、ハイパーエクセルが進めるシリーズBラウンドに戦略投資家(SI)として参加する。投資額は500億ウォン(約55億円)前後で、調達総額1500億ウォン(約165億円)の3分の1を担う。
ハイパーエクセルは、韓国科学技術院(KAIST)のキム・ジュヨン教授が2023年に設立したAI半導体ファブレス企業だ。大規模言語モデル(LLM)の推論向けAI半導体「LPU(Language Processing Unit)」を開発している。ネイバークラウドやLG電子と共同開発を進めており、共用インフラや家電、ロボット向けのオンデバイスAI市場を狙う。2024年末に550億ウォン(約61億円)規模のシリーズA調達を実施し、その1年6カ月後に大型の追加調達に乗り出した。当時の企業価値は2000億ウォン(約220億円)超と評価された。
ゲーム会社がAI半導体企業に大規模資金を投じるのは珍しい。クラフトンは2025年に「AIファースト」を宣言した後、1000億ウォン(約110億円)規模のGPUクラスターを構築し、リアルタイムで相互作用できるAIキャラクターや個別最適化したコンテンツ生成の実験も進めている。こうした取り組みを通じ、AIがゲーム産業のコストを大きく押し上げると判断したようだ。
単純な反復型のノンプレーヤーキャラクター(NPC)と異なり、利用者とリアルタイムで対話するAIエージェントには膨大な演算インフラが要る。開発段階でもコード生成や画像制作、品質検査へとAIの活用範囲を広げるほど、推論需要は幾何級数的に増える。ゲーム業界関係者は「AIキャラクターを技術デモとして見せることと、数百万人に商用サービスとして提供することは次元の違う問題だ」と指摘する。そのうえで「最終的には推論コストを下げる技術がゲーム会社の競争力になる」と話した。
ハイパーエクセルのLPUは、こうしたコストを引き下げる技術として注目される。世界のAIインフラ市場を独占するエヌビディアの半導体は1個当たり数千万円に達し、品薄まで起きている。LPUはその代替候補とされる。汎用GPUと違い、LLMの推論演算に特化している点が特徴だ。調達が難しい高帯域幅メモリー(HBM)の代わりに低電力DRAM(LPDDR)を使い、価格と消費電力を抑える。クラフトンがエヌビディアなど世界のAIエコシステムと協業しつつ、ハイパーエクセルへの戦略投資に踏み切ったのはこのためだ。長期的にはGPU依存を減らし、独自の原価統制力を確保できるとみている。
フィジカルAIでも拡張
クラフトンはフィジカルAI市場でも存在感を高めている。主力ゲーム「PUBG: BATTLEGROUNDS」を基盤に、フィジカルAIの物理学習を仮想空間のゲーム内で実行できるインフラを備える。防衛産業大手のハンファ・エアロスペースが3月、クラフトンに先に提携を持ちかけ、フィジカルAIを共同開発する合弁会社(JV)の設立を提案した背景でもある。
無人システムや製造装置が現場でリアルタイムに環境を認識し、判断するフィジカルAIでも半導体の重要性は高まっている。消費電力と発熱を抑えながら高速に推論できる低電力・低遅延の半導体が欠かせないためだ。クラフトンによるハイパーエクセル投資は、フィジカルAI戦略ともつながる。
クラフトンは2025年、米サンフランシスコにルードロボティクスを設立し、ヒューマノイドロボットの「頭脳」の開発に着手した。ゲーム内の仮想キャラクターを動かすAI技術を、現実世界のロボット知能へ広げる試みだ。
業界では、クラフトンがAIハードウエア基盤まで統制する総合テック企業へ進化しているとの見方がある。IT業界関係者は「ゲーム会社がAIチップなどハードウエア領域までバリューチェーンを垂直統合した例は、世界でも多くない」と分析する。さらに「AIを理解した長期戦略を立て、それを一つずつ実行している会社のようだ」と語った。
アン・ジョンフン/チェ・ダウン記者 ajh6321@hankyung.com

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