欧州銀行界、ドル建てステーブルコインに出遅れ懸念 競争力確保を訴え
期間別予測トレンドレポート



欧州の銀行界で、ステーブルコインやトークン化預金を巡る競争で出遅れることへの懸念が強まっている。ドル建てステーブルコインが世界のデジタル金融市場を主導するなか、欧州も独自の決済インフラとユーロ建てトークン化マネーの競争力を確保する必要があるとの指摘が出ている。
金融専門メディアのファイナンスフィードは6月15日、ユーロ銀行協会(Euro Banking Association、EBA)がトークン化マネーの導入状況をまとめた報告書を公表したと報じた。
報告書は、銀行や電子マネー機関が発行するステーブルコイン、トークン化預金、預金トークンのほか、実際の活用事例や導入条件を分析した。中央銀行デジタル通貨(CBDC)やビットコイン(BTC)など一般の暗号資産は分析対象に含めていない。
EBAは、ステーブルコインとトークン化預金はなお初期段階にあるものの、世界の金融インフラを巡る競争で重要性が高まっていると評価した。ビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)によるステーブルコインの実証、ブラックロック(BlackRock)のトークン化商品、主要銀行のブロックチェーン実証実験、越境決済の試みが急速に増えているためだ。
なかでも欧州は、ドル建てステーブルコインの拡大を主要なリスクとみている。ドル連動型ステーブルコインが世界市場を席巻すれば、デジタル金融でもドル依存が一段と強まる可能性がある。欧州の決済主権や金融インフラの競争力が損なわれかねないためだ。
報告書は、欧州がユーロ建てのトークン化決済手段を十分に育てられなければ、海外インフラへの依存が強まり、デジタル金融市場で影響力を失う恐れがあると指摘した。そのため、規制されたステーブルコイン、トークン化預金、デジタルユーロ、銀行主導のブロックチェーン基盤を巡る議論が重要になると説明した。
もっともEBAは、ステーブルコインの普及が自然に進むとはみていない。消費者や企業の決済習慣を変えるには時間がかかるためだ。トークン化された決済手段が主流として定着するには、規制順守、安全性、復元力、費用効率、利用者体験のすべてを満たす必要があると分析した。
報告書は、ステーブルコインの強みとして費用効率と利用者体験を挙げた。一方で、既存の決済網と比べた明確な差別化はなお十分に証明されていないと評価した。EBAは「既存の決済網と比べた中核的な差別化は、なお実証される必要がある」としている。
銀行界の警戒感も強まっている。ステーブルコイン発行体、ビッグテック、決済ネットワーク、デジタルウォレット事業者が、将来の決済インフラの主導権を握る可能性があるためだ。このため銀行は、既存の金融圏と切り離された並列的な決済網よりも、規制下の金融インフラのなかで活用できるトークン化預金や預金トークンにも注目している。
EBAのデジタル通貨・スマート決済ワーキンググループのビム・グロセマンス議長は、基盤技術が急速に進化し、トークン化マネーの導入が世界の決済ネットワークや大企業に広がっていると指摘した。そのうえで、金融機関はこの分野への投資を先手を打って評価し、判断する必要があると強調した。
同氏は、競争力を維持し、新たな機会を捉えることが重要だと付け加えた。
市場では、ステーブルコインとトークン化マネーが主流金融に組み込まれていく流れが続くとみられている。ただ、今後の競争の焦点は、ステーブルコインを導入するかどうか自体ではない。ドル中心のデジタル決済網に対抗し、欧州が独自インフラと顧客接点を確保できるかに移る見通しだ。

Minseung Kang
minriver@bloomingbit.ioBlockchain journalist | Writer of Trade Now & Altcoin Now, must-read content for investors.
