概要
- スペースXはナスダック上場を通じて、750億ドルを調達し、時価総額は1兆7700億ドルに達したと明らかにした。
- スペースXは調達資金を打ち上げインフラ・衛星群・AIコンピューティングインフラの拡張に投じ、宇宙・通信・AI事業を強化する方針を示した。
- マスク氏が率いるテスラとスペースXは、2027年ごろに80%%以上の確率で合併し、AI分野に資金と技術を集中させるとの観測が浮上した。
期間別予測トレンドレポート


スターリンクで稼いだ資金をAIと宇宙に集中投下し、「マスク帝国」の拡張を急ぐ。
公募価格は1株135ドルに決まり、スペースXは上場した。
調達額は750億ドルと、IPOとして過去最大となった。

イーロン・マスク氏が率いる宇宙企業スペースXが6月12日、米ナスダック市場に上場した。調達額、企業価値ともに新規株式公開(IPO)の過去最大を更新した。
スペースXは同日、クラスA普通株の既存株約5億5000万株を1株135ドルで売り出し、750億ドルを調達した。ティッカーはSPCX。上場時点の企業価値は1兆7700億ドルと評価された。従来の最大記録は、294億ドルを調達し、企業価値1兆7000億ドルの評価を受けたサウジアラビア国営石油会社アラムコだった。ブルームバーグ通信によると、今回の公募には目標額の4倍にあたる2500億ドルの投資需要が集まった。
2002年設立のスペースXは、再利用ロケット「ファルコン」と衛星インターネット「スターリンク」を運営する世界最大の宇宙企業だ。米航空宇宙局(NASA)などが中心だった国家主導の宇宙事業を民間主導へ転換し、「ニュー・スペース時代」を開いたとされる。
2月にはマスク氏の人工知能(AI)企業xAIを統合し、宇宙、通信、AIをまたぐ事業体制を整えた。マスク氏はテスラに続き、時価総額が1兆ドルを超える上場企業を2社同時に率いる初の企業経営者となった。
スペースX上場に2500億ドル集まる
火星に100万人都市構想、スターリンク収益を投資
「人類を多惑星種にする」
マスク氏の宇宙企業スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(Space Exploration Technologies、スペースX)が5月20日に公表したIPO目論見書で掲げた会社の目標だ。1兆7700億ドルに達する同社の企業価値は、伝統的な財務分析だけでは説明しにくい。2002年の設立以来、23年間一度も黒字を計上していない。利益がないため、株価収益率(PER)も算出できない。
それでも6月12日に上場したスペースXに2500億ドルの資金が集まったのは、「火星開拓」という明確なビジョンを示したマスク氏への投資との受け止めが大きい。マスク氏は今回の上場を機に、宇宙、ロボティクス、AIをまたぐ巨大な企業群の構築を狙う。
宇宙旅行コストを5万分の1に
マスク氏は、火星に100万人規模の定住都市を建設する構想を掲げる。人類は永遠に地球だけでは生きられないというのが同氏の考えだ。そのためには宇宙船が約1000機必要になる。1機あたり200人を乗せ、50回往復させる構想で、この宇宙船がスペースXが5月22日に12回目の試験打ち上げに成功した「スターシップ」だ。
前提になるのは、宇宙旅行コストの大幅な引き下げだ。人類初の有人月探査飛行だったアポロ計画には100億ドルがかかった。これを5万分の1の20万ドルまで下げなければ、大規模な人類移住は実現できないというのがマスク氏の計算だ。
マスク氏が示すコスト削減策は4つある。打ち上げ機の完全再利用、軌道上での再補給、メタン推進剤の使用、火星での燃料生産だ。打ち上げ機の再利用はすでに半分成功した。2017年に初めて第1段ブースターの再利用に成功した「ファルコン9」は、個別機体の累計再利用回数が35回を超えた。スターシップは第1段と第2段の両方を再利用できるよう設計されている。燃料には、火星でも生産しやすいメタンを使う。
次の目標は軌道上での再補給だ。スペースXは、最小限の燃料だけを積んで飛行士と貨物を載せた打ち上げ機を軌道に投入したうえで、地上から燃料輸送用宇宙船(タンカー)を3〜5回打ち上げて補給する構想を描く。
テスラ・スペースX合併観測も
スペースXの上場は、こうした計画を進めるための資金確保が狙いとみられる。スペースXは目論見書で、資金使途について「打ち上げインフラと打ち上げ機の強化、衛星群の拡大、AIコンピューティングインフラの拡張に充てる」と明記した。
スペースXは現在、宇宙打ち上げ機、通信(スターリンク)、AIの3事業を手がける。創業初期は宇宙打ち上げ機を打ち上げ、NASAなどの政府事業を受託し、民間企業の衛星打ち上げを代行するサービスに力を入れていた。ただ、案件ごとの事業には限界があった。そこで2019年、消費者向けのサブスクリプション型通信サービス「スターリンク」を投入した。自社の打ち上げ機で通信衛星を打ち上げ、利用者から月額料金を受け取る事業だ。スターリンクは2025年、サービス開始から6年で加入者780万人を確保し、同社売上高の61%を稼ぐ収益源になった。
AIは、スペースXが投資家に超大型の成長市場として訴える分野だ。同社は市場規模が26兆5000億ドルに拡大すると説明している。宇宙打ち上げ機市場の3700億ドルの71倍、通信市場の1兆6000億ドルの16倍にあたる。2月のxAI統合もその布石と位置づけられる。地上には「コロッサス」などの超大型データセンターを建設し、宇宙には太陽光ベースのデータセンターを打ち上げ、年1ギガワットを超えるコンピューティング能力を供給する計画だ。
上場後には、マスク氏が創業したテスラとスペースXが合併するとの観測も出ている。両社統合の利点は、分散していた資金と技術を今後の主戦場となるAI分野に集中できる点にある。経営権の面でもマスク氏に有利に働く可能性がある。1株1議決権のテスラで議決権比率が10%台にとどまるマスク氏は、合併を通じて自らの議決権を70%以上に高められるとの見方がある。ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は最近のリポートで、「スペースXとテスラは2027年ごろ、80%以上の確率で一つの企業になる」との見通しを示した。
シリコンバレー=キム・インヨプ特派員/キム・ドンヒョン記者 inside@hankyung.com

Korea Economic Daily
hankyung@bloomingbit.ioThe Korea Economic Daily Global is a digital media where latest news on Korean companies, industries, and financial markets.
