期間別予測トレンドレポート


経常黒字や株高が、かえってウォン相場の重荷になっている。対ドルのウォン相場は心理的節目だった1ドル=1550ウォン台を割り込み、ウォン安が進んだ。2026年4〜6月期の平均相場は通貨危機後で最高となるなど、ウォン安に歯止めがかかっていない。
ソウル外国為替市場によると、ウォン相場は6月6日の夜間取引で一時1ドル=1561.5ウォンまで下落した。世界金融危機の渦中だった2009年3月6日の1597.0ウォン以来、17年3カ月ぶりのウォン安水準だ。6月7日午前2時の終値は1559.0ウォンと、日中取引の終値1539.1ウォンに比べ1.43%(19.9ウォン)のウォン安・ドル高となった。4〜6月期に入り6月5日までの平均相場は1490.98ウォンとなり、通貨危機の影響が本格化した1998年1〜3月期の1596.88ウォン以来、約28年ぶりの高水準となった。
半導体輸出が好調でもウォン安が続く最大の要因は、海外投資家による韓国株の純売り越しにある。半導体株の急騰で運用資産に占めるサムスン電子とSKハイニックスの比率が大きく膨らみ、機械的なリバランス売りが出ているためだ。半導体株の一段高を見込んで買い進めた投資家も、為替変動リスクを避けるために為替ヘッジを進めており、これがウォン売り圧力を強めている。一方、過去最高水準のドルを稼いだ輸出企業は、海外再投資を優先してウォンへの両替を控えている。ドル売り・ウォン買いが細っている格好だ。
韓国株は保有してもウォンは売る――。海外投資家の為替ヘッジが、相場の一方向への偏りを強めている。これまでウォン高要因だった輸出好調と株高が、足元では逆にウォン安要因へと変わっている。
株価が上がるほど、海外投資家はポートフォリオ調整と為替ヘッジのためにウォンを売る。半導体輸出で得たドルも海外へ再投資され、為替相場の下支えにはつながっていない。市場では、半導体が原油に代わってドル流動性を供給し、「ペトロダラー」の時代に代わり「DRAMドル」の時代が到来したとの指摘もある。

国民年金の為替ヘッジ効果、海外勢が相殺
韓国銀行(中央銀行)の経済統計システムによると、年初から6月5日までの平均相場は1ドル=1477.06ウォンだった。過去最高だった2025年の1420.97ウォンを50ウォン超上回った。6月に入ってからも、ウォン相場は1週間で3.48%下落した。対ドルで3.54%上昇したロシア・ルーブルに次ぐ大きさだ。
ウォン安が止まらない背景には、海外投資家による韓国株の大規模売却がある。6月5日の韓国総合株価指数(KOSPI)は8160.59と、年初比で94%上昇した。とりわけ半導体大手2社であるサムスン電子とSKハイニックスの上昇ペースは異例だった。この結果、世界の資産運用会社が運用するファンドでは、韓国株、とくに半導体株の組み入れ比率が一時的に急上昇した。グローバルファンドは一般に、単一銘柄の比率が10%を超えるか、5%以上の銘柄の合計が40%を超えると、リバランスに動くとされる。
サムスン電子とSKハイニックスの比率が大きく高まると、利益確定に動いた海外投資家は韓国内の別銘柄へ資金を振り向けず、ドルに換えて市場を離れた。これがウォン売りを急増させた。世界国債指数(WGBI)への組み入れを受け、4月から足元までに海外資金は187億ドル流入した。国内市場復帰口座(RIA)の導入後、5月19日までに海外投資をしていた個人資金も1兆9443億ウォン(約2090億円)国内へ戻ったが、相場を支えるには力不足だった。
海外投資家の為替ヘッジもウォン売りを促している。韓国の半導体株には強気でも、ウォン安を警戒する投資家は株を買いながらウォンは売っているということだ。国民年金は相場安定のためドル売りの為替ヘッジを進めているが、逆方向の海外勢のヘッジ需要が大きく、効果を薄めている。韓米の金利逆転も海外勢のヘッジを一段と魅力的にしている。金利差から生じるヘッジプレミアムも期待できるためだ。
「半導体ドル」がウォン買いを消した
韓国の半導体企業が人工知能(AI)特需で稼いだドルを米国へ再投資していることも、ウォン買い需要が消えた一因だ。米外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー上級研究員は、こうした現象を「DRAMドル」と呼んだ。かつて中東の産油国がドルで原油を売り、その資金を米国へ再投資して「ドル覇権」を支えたペトロダラー時代の原油の役割を、いまや半導体をはじめとする東アジアの情報技術(IT)製品が担っているという意味だ。
裏を返せば、半導体輸出が急増し経常黒字がどれだけ膨らんでも、国内の外為市場でウォン買いには結びつかないことを意味する。
通貨当局が口先介入を繰り返しても、相場への影響は限られている。「為替相場はさらに上がる」との思惑から市場参加者が先回りしてドルを買い、その結果として実際にドル高・ウォン安が進む自己実現的な期待が強まっているためだ。
6月7日には、ク・ユンチョル副首相兼財政経済部長官が緊急市場点検会議を開いた。韓国銀行と金融監督院を通じ、投機的な動きや市場かく乱の疑いがある取引を点検する方針を明らかにした。輸出入企業がウォン安に便乗し、輸入代金の支払いを前倒ししたり、輸出代金の回収を過度に遅らせたりする違法取引がないかも調べる。
チョン・ヨンヒョ記者/ニューヨーク=ビン・ナンセ特派員 hugh@hankyung.com

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