サムスン電子の全面スト迫る 政府の緊急調整権が最後の焦点
概要
- サムスン電子の労使は、成果給の配分方式と赤字事業部門の補償問題を巡って合意に失敗し、5月21日から18日間の全面ストに入ると明らかにした。
- 政府は、緊急調整権の発動はなお時期尚早との立場だが、ストが現実化して半導体生産の支障や供給網への衝撃が大きくなれば、介入する可能性があると伝えた。
- 業界内外では、18日間の全面ストが強行された場合、直接・間接損失は最大100兆ウォンに達するとの試算が出ている。
期間別予測トレンドレポート



サムスン電子の労使は5月20日、中央労働委員会の事後調整で最後まで合意点を見いだせなかった。5月21日に予告された全面ストライキが現実味を増している。労組は「調整案には同意したが、会社側が決断せず調整が打ち切られた」と主張した。これに対し会社側は、赤字事業部門にまで高額補償を求める要求は経営の原則を揺るがしかねないとして対抗した。
国家経済への打撃が懸念されるなか、政府による緊急調整権の発動も改めて取り沙汰されている。キム・ミンソク首相は5月17日の国民向け談話で、サムスン電子のストに伴う甚大な被害の可能性に言及し、緊急調整権の行使も検討対象になりうるとの認識をにじませていた。ただ、政府は5月20日、「まだ性急だ」として、まずは労使の自主交渉を支援する方針を示した。
韓国雇用労働部「緊急調整権はなお早い」
韓国雇用労働部は、サムスン電子の労使による事後調整が不成立に終わったことを受け、緊急調整権の行使には慎重な姿勢を示した。同部関係者は記者団向けの緊急説明で、「中央労働委員会の2回目の事後調整が不成立となり、非常に残念だ」と語った。そのうえで「まだ時間は残っている。当事者間の対話による解決という大原則のもと、自主交渉で解決できるよう形式にとらわれず最大限支援する」と述べた。
緊急調整権の発動に向けた法的検討を終えたのかとの質問には、「双方に対話の時間がまだ残っており、その点を論じるのは早い」と答えた。全面スト前の発動を検討したかと問われても、「なお労使が自主的に交渉する時間がある」として明言を避けた。
政府としては、直ちに強制調整に乗り出すのではなく、最後の交渉余地を残した格好だ。サムスン電子の労使が中央労働委員会に追加の事後調整を申請する可能性も残る。
緊急調整権は、韓国の労働組合および労働関係調整法76条に基づく制度だ。韓国雇用労働部長官は、争議行為が国民経済を著しく害したり、国民の日常生活を危うくしたりする恐れがあると判断した場合、緊急調整を決定できる。発動されれば労組は争議行為を中断しなければならず、その後30日間はストが禁じられる。この期間中も合意に至らなければ、中央労働委員長の職権で仲裁付託が決まる可能性がある。
なお残る「政府介入」という変数
政府は当面、緊急調整権の発動に慎重な姿勢を崩していない。ただ、労使の自主交渉が最後までまとまらず、全面ストが現実となれば、政府に残る最後のカードは緊急調整権となる。半導体生産の支障や供給網への衝撃が大きくなれば、政府が自主交渉を見守るだけでは済まなくなる可能性がある。
政府高官もすでに、緊急調整権の発動余地に相次いで言及してきた。イ・ジェミョン大統領は最近、SNSで「労働権と同様に企業の経営権も尊重されるべきだ」と投稿した。さらに「公共の福祉などのために基本権が制限されうる」とも記し、ストが国民経済に重大な影響を与える場合には政府介入もありうるとの考えを示した。
キム首相も国民向け談話で、サムスン電子のストによる大規模な被害の可能性に触れ、労使双方に合意を促した。キム・ジョングァン産業通商資源部長官もこれに先立ち、「産業通商資源部長官としては、万一ストが起きれば緊急調整も避けられないと考える」と発言している。
もっとも、政府が緊急調整権の発動に踏み切るには負担もある。今回の事後調整では、中央労働委員会の調整案に労組は同意した一方、会社側は留保姿勢を示して署名しなかった。スト阻止を目的に強制調整権を使えば、会社側が受け入れなかった調整案をめぐる責任論とも絡み、労働界の反発が強まる公算が大きい。
裁判所がこれに先立ち、争議行為の期間中も保安作業や安全保護施設の維持業務は平常時と同水準で運営すべきだと判断していた点も変数だ。ストが始まっても最低限の安全・保安業務は維持されるため、政府は直ちに強制調整へ動くのではなく、実際に生産支障が出るかを見極める可能性がある。
労組「調整案に同意」 サムスン「成果給原則は崩せない」
サムスン電子の超企業労組サムスン電子支部は、予定通り5月21日から6月7日まで18日間の全面ストに入る方針だ。労組は、事後調整の過程で中央労働委員会の調整案に同意したが、会社側が最終的な立場を示さなかったため調整が終了したと主張した。
チェ・スンホ委員長は声明で、「労働組合は3日間の事後調整に誠実に臨み、接点を探るため最善を尽くした」と説明した。続けて「5月19日午後10時ごろ、労組は中央労働委員会が提示した調整案に同意したが、会社側は拒否の意思を示した」と明らかにした。さらに「中央労働委員長が調整不成立を宣言する直前、会社側のヨ・ミョング代表交渉委員が拒否の意思を撤回して時間を求め、3日目まで延長された」と付け加えた。
ただ、5月20日午前になっても会社側は最終的な立場を明らかにしなかったという。チェ委員長は「会社側は『意思決定ができていない』と繰り返すだけで、最後まで立場を示さなかった。結局、中央労働委員会の進行により事後調整は終了した」と語った。
チェ委員長は「経営陣の意思決定の遅れで事後調整手続きが終わったことに深い遺憾を表する」としたうえで、「労働組合は予定通り、5月21日に適法に全面ストへ入る」と強調した。一方で「スト期間中も妥結に向けた努力は止めない」と述べた。
サムスン電子は事後調整の終了について「非常に残念だ」との立場を示したうえで、「最悪の事態を防ぐため、最後の瞬間まで対話をあきらめない」と表明した。会社側は「いかなる場合でもストがあってはならない」と強調した。
合意が不調に終わった核心の争点は、成果給の配分方式だ。とりわけ赤字事業部門への補償問題で隔たりが大きかったという。サムスン電子は「事後調整で土壇場まで合意に至らなかったのは、労組の過度な要求をそのまま受け入れれば会社経営の基本原則が揺らぎかねないためだ」と反論した。さらに「それは『成果のあるところに報酬がある』という会社経営の基本原則に真っ向から反する」と説明した。
そのうえで「この原則を放棄すれば、当社だけでなく他企業や産業にも悪影響を及ぼしかねないと判断した」と述べ、追加調整や労組との直接対話を通じて問題解決の努力を続ける考えを示した。
サムスン電子のストが現実となれば、波紋は大きい。半導体の生産ラインは24時間連続稼働を前提に運営されている。ストが実際の生産支障につながれば、メモリー供給や顧客企業への納期、協力会社の操業、地域商圏にまで影響が及ぶ恐れがある。業界内外では、18日間の全面ストが強行された場合の直接・間接損失は最大100兆ウォン(約10兆7000億円)に達するとの試算も出ている。
キム・デヨン/ホン・ミンソン 韓経ドットコム記者

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