サムスン電子労組「5月21日に全面スト」 18日間なら100兆ウォン損失の試算
概要
- サムスン電子の労使による事後調整が決裂し、5月21日に約5万人が参加する全面ストが予定されている。直接・間接で100兆ウォン損失への懸念が浮上した。
- ストに踏み切れば、半導体生産支障、メモリー供給のボトルネック、世界の供給網への打撃に加え、協力会社や地域商圏の経営難が広がる可能性がある。
- サムスン電子は、労組の成果給を巡る要求は過度であり、受け入れれば会社経営の基本原則が揺らぐとして、スト反対の立場を維持している。
期間別予測トレンドレポート



韓国中央労働委員会で進められていたサムスン電子の労使の事後調整が決裂し、韓国の半導体産業だけでなく世界の供給網にも警戒感が広がっている。半導体の生産ラインは24時間の連続稼働を前提とする。ストライキが実際の生産支障に発展すれば、サムスン電子の損失にとどまらず、協力会社や地域商圏、世界の供給網にまで打撃が及ぶ可能性がある。
サムスングループ超企業労働組合サムスン電子支部は5月20日に声明を出し、「中央労働委員会の進行により事後調整は終了した」と表明した。そのうえで、予定通り5月21日に適法な全面ストライキに入ると明らかにした。労組は、5月19日午後10時ごろに中央労働委員会が示した調整案に同意したが、会社側が拒否したと主張している。
労組によると、その後に会社側の代表交渉委員はいったん拒否の意思を撤回し、判断の時間を求めた。ただ、5月20日午前11時まで「意思決定ができていない」との説明を繰り返したという。
全面ストが現実になれば、最大の問題は経済的損失だ。実際にストに発展した場合の被害規模は30兆ウォン(約3兆2400億円)に達するとの見方がある。半導体は韓国の輸出全体の4割近くを占めるだけに、影響は個別企業の労使問題にとどまらない。
人工知能(AI)向け半導体の需要が急増する局面で生産に支障が生じれば、メモリー供給の逼迫、顧客企業への納期遅延、価格変動、税収減が同時に表面化しかねない。業界では、5月21日から18日間の全面ストが強行されれば、直接・間接の損失が100兆ウォン(約10兆8000億円)に達するとの試算も出ている。実際、5月17日に国民向け談話を出した金民錫首相も、「100兆ウォン被害」への懸念を公にしていた。
半導体工程の特性上、安全面のリスクも大きい。サムスン電子は、半導体事業所の安全保護設備やウエハーの変質防止作業は争議期間中も正常に行われなければならないとの立場を示している。ウエハーは工程の待機限界時間内に次の工程へ進まなければ、変質や腐敗が生じるおそれがある。クリーンルーム設備も、恒温恒湿の維持や消耗品の交換、緊急対応が止まれば、復旧が難しい損傷が生じかねないという。ウエハーの廃棄は直接損失にとどまらず、長期の供給支障や取引先離れにもつながりうる。
協力会社への波及も小さくない。サムスン電子の生産支障は、素材・部品・装置を手がける中小企業の経営難につながる恐れがあるためだ。納品日程が乱れれば協力会社の負担が重くなり、中小・中堅企業の操業や雇用にも影響する。
韓国小商工人連合会がサムスン電子の平沢キャンパス前で全面ストの撤回を求めたのも、このためだ。同連合会は、半導体生産の支障が素材・部品・装置分野の中小企業の経営難に直結すると懸念している。大企業の周辺商圏や地域の商店街でも売上高の急減が避けられないとの指摘がある。
労組内部の対立も課題として浮上している。超企業労組のDX部門の組合員は、団体交渉の要求案を確定する過程で執行部が総会の議決など通常の意見集約を経なかったとして、団体交渉の中止を求める仮処分を申請した。一部の組合員は、交渉やストの手続きに違法行為があったとして韓国雇用労働部に陳情を出した。労組がDS部門の成果給要求を軸に交渉を進めたことで、DXなど他部門の利害が十分に反映されていないとの不満が噴出している。
成果給が交渉や争議の対象になりうるかを巡る法的論争も続く見通しだ。韓国大法院はこれに先立ち、超過利益成果給(OPI、旧PS)を退職金算定の基礎となる平均賃金とは認めなかった。経営成果給は労務提供の対価ではなく、経営実績の事後的な分配だと判断したためだ。法曹界では、賃金ではない経営成果の配分方式を理由に、生産支障を伴うストを行うことが正当な交渉範囲に当たるのかを巡る論争が広がりそうだ。
崔承鎬・超企業労組委員長は、事後調整の終了後に出した声明で、労組は3日間の事後調整に誠実に臨み、接点を探るため最善を尽くしたと説明した。中央労働委員会が示した調整案に同意したとも述べ、経営陣の意思決定の遅れで事後調整手続きが終わったことに深い遺憾を示した。その一方で、スト期間中も妥結に向けた努力を止めないと強調した。
サムスン電子は、事後調整の終了を非常に残念に思うとしたうえで、最悪の事態を防ぐため最後の瞬間まで対話を諦めないとの立場を示した。
会社側は、いかなる場合でもストがあってはならないと主張した。土壇場まで合意に至らなかった理由については、労組の過度な要求をそのまま受け入れれば会社経営の基本原則が揺らぐためだと説明した。とりわけ、会社は成果給の規模と内容の大部分を受け入れたにもかかわらず、赤字事業部にまで社会通念上受け入れがたい規模の補償を求める要求を労組が曲げなかったと訴えた。
サムスン電子は、追加調整や労組との直接対話を通じて最後まで問題解決を図る方針だ。ただ、労組が全面スト突入の方針を正式に打ち出したことで、サムスン電子の労使対立は経済的損失に加え、法的論争や労組内部の対立も絡む複合危機の局面に入っている。
ホン・ミンソン/キム・デヨン 韓経ドットコム(Hankyung.com)記者

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